□ Passion □
---- 続・9月4日 ----
「ん?」
いきなり落ち着きのなくなった私に“何をやってるんだろう”と言いたげな視線が突き刺さる。
この話は通りすがりに聞かれるのも嫌だし、さっき外に放り出したフォルク様に聞かれたら困りますからね。
「ちょっと奥のほうへ…」
首をちょっと傾げて見上げるフレイア様にとてつもなく緊張する。
どう切り出したものでしょうか…
「なぁに?」
純粋でまっすぐな視線。
大人のようで子供みたいなアンバランスさ…こういう所が好きなんですよね。
「えーと、そのぉ…」
もごもごと、口の中で言いたい事が留まっているけれど…意を決して、
「SchneeさんとかWillくんの事なんですが…」
口にした瞬間、にっこり微笑むフレイア様。
うわぁあ…寂しがってるわけじゃない気がする…
「Schneeさん…」
微かに頬を赤らめられて、どう言えばいいのかが分からない。
やっぱり…勝ち目ないかなぁ…とか考えながら、
この間から渡そうと思っていた指輪を手の中で転がしていると、フレイア様がそれを目ざとく発見。
「何か、可愛らしい指輪だね」
うんうんと頷く私に“あの可愛い子にあげるのかなぁ”とにっこり。
違いますよぉおお!!
心の中で叫ぶ私から視線を外した彼女はどこへ行こうと考えているのか、扉の前に立って「あーけーて♪」とせがむ。
「嫌です」
「酷いぃ…サーラがいじめるぅう…えぐえぐ…」
…どう見ても、嘘泣きとしか思えないのですが。
あぁあ、フォルク様を蹴り出しておいてよかった。
こんな話聞かれたら、どうなるか…
泣き真似を止めたフレイア様が「☆海に行きたいな」と呟いたので「ついていきます」と言えば「こなくていい」と即答されてしまう。
その上、間髪入れずに飛び出た言葉が、
「1人で行きたい」
呆然とする私に、意地の悪い笑い声を上げるフレイア様。
「私は私で楽しくやるから、あなたはあなたで彼女たちと楽しくやってね」
さっきまでの子供っぽさが一転、どこから見ても立派な悪女・・・(ぉぃ
「そんなぁ…」
うぅ、そこまでおっしゃいますか?
やっぱり、寂しいとかではなくて…私の事が嫌になったという事なのでしょうか。
肩を落とし、うなだれていた私の耳に届く“カタン”という音。
何かと思えば、前に渡した結婚指輪を取り出した音だったらしく、フレイア様は小さな箱を手にしていた。
「こっち来てこっち」
手招きされて行ってみれば、ぽんっと私の手の上にそれを…
「が!」
意味不明の叫びを上げた私に決定的な言葉。
「返す」
「えぇええええっ!!?な、何で!!」
よもや、返されるとは考えてもなくて、慌てふためくだけ。
「それ持ってると男の人に声かけて貰えないんだもん」
「だ、だからって何も返さなくたって!!」
うわぁあぁああっ…あんまりだぁあ!
心の中で滝のように涙を流しているのに気づいているのかないのか…フレイア様が楽しそうに言った。
「あの子たちももう大きくなったし、お互い新しくいい人見つけましょ」
もう…本当にダメかも。
鼻歌交じりの彼女を引き止められるだけの魅力が自分にあるとは思えない。
「じゃ、そゆことで」
ひょいっと槍を取り上げたフレイア様は、呪文を唱え始め…
「Call…あ」
あ…は…あはははっ
さっきまでのショックが嘘の様に、大声で笑ってしまう。
「いやぁあんっ!!間違えたぁあ!」
「リターンのつもりでしたね」
逃げるつもりが、絶対に逃げられない様になってしまった彼女に微笑みかける。
「さて、とことん話し合いましょうか」
自業自得の失敗でショックを受け、座り込んでいたフレイア様は私を見上げてだだっ子の様にじたばたとその場で騒ぐ。
「やだぁ〜っ!ここから出るぅう!!」
あぁ、もう…そうしていると子供の頃と全く同じですよ。
「そんな我が侭言わずに」
笑みを崩さずに言う私に、唇を尖らせぷく〜っと頬を膨らませる。
「出たい」
「ダメです」
その瞬間、くるりと扉の方へ向いて「外のフォルクたたき起こす」と宣言。
そ、それだけは勘弁を…
結局、こっちが有利になったのは一瞬だけ…情けないなぁ。
もう、どうしていいやら分からなくなって、部屋の隅で座る私。
フレイア様はといえば、フォルク様を起こすわけでもなく、窓から外の様子をうかがっている。
「何か見えます?」
隣に立った私に「…外からよく見えるなぁ…この家」とぽつり。
「あぁ…そうですねぇ」
気分がどん底まで沈んでしまっている私は、それだけを言ってさっきの位置へと戻る。
余裕ないな…本当に。
ため息をついて、膝に顔をうずめていた私のそばに近づくフレイア様。
「ん…?どうなさいました?」
さっきまでと明らかに違う様子。
「いや…そういえば、引越ししたんだよね?」
「えぇ…そうですけど…」
何を唐突に…
「そっちは改装しないの?」
聞かれて「そのまま放り出してる」と答える。
「見に行っていい?」
「それは構いませんが…」
開けた瞬間に☆海に行ってしまわれそうで、ロックを解除するのにためらう。
でも…いいか…
そうなったらそうなったで、引き止められない自分が悪いのでしょうから。
「地の4階だっけ?」
質問に頷くか頷かないかの一瞬でいなくなるフレイア様。
相変わらず素早いですけれど…本当に行っているのかは分かりませんよね。
自嘲の笑みを浮かべながら、その部屋へと向かうとちゃんと待っていてくださって…疑ってしまった事を心の中で謝った。
「どうぞ」
部屋の中へと招き入れて、私は壁にもたれて座り込む。
入り口にサークルが1つ増えている以外には、手の加えられていない部屋。
「つまんないお部屋」
ぼそっと呟いたフレイア様は、部屋の片隅でそれを見ていた私のすぐ隣にぺたんと座って、
“どうなさいました?”と聞くために口を開きかけた私へとねこのように擦り寄ってきた。
「ホントは…寂しかっただけだよぅ」
甘えるような舌っ足らずの口調でうつむいてぽそぽそと言うのに、頬が緩む。
そうか…さっきやたらと外を気にしていたのは…
ついさっきはフォルク様がすぐ外に転がっていた事で言えなかったのだと、ここでようやく気がついた。
「何だか、可愛い女の子の知り合い多いみたいだし…サーラってば誰にでも優しいから」
「ただの知り合いですから…」
笑いかけてもフレイア様は依然としてうつむいたまま。
“多くなんかないですよ”と言うべきだったとかなぁ…と後悔する。
でも、女性の知り合いもそれなりにいる事も確かで、こんな時に咄嗟の嘘がつけるほど気が利いているわけでもなく…
はぁ…やっぱり、こんな所がこの方を不安にさせるのでしょうかね。
「…私なんてサーラの事パパなんて呼んだことないのに」
長い沈黙の後にぽつり。
そりゃ、当たり前でしょうに…
「ふ、フレイア様…?
私はあなたの父親ではないんですよ」
「分かってるけど…パパって呼んでみたいんだもん」
ぎゅぅっと服の端を握って、言われてしまうとダメだとも言えない。
「よ、呼ぶだけならご自由にお好きなように…」
かすれた声で何とか答えると、フレイア様は笑顔で「パパ♪」と…
うっ…この方に呼ばれるのはやっぱりかなりの抵抗がある。
「パパ〜♪」
私の考えていることなどお構いなしにぎゅぅっとしがみつくのに苦笑する。
「何だかなぁ…」
でも、楽しそうだからいいかな…
触り心地のいいその髪に触れていると、黙り込まれてしまう。
「ん?」
もしかして…嫌だったかな。
思って髪から離そうとした手が止まる。
柔らかく微笑んで私を見上げたその表情がとても可愛らしくて…
「フレイア様…」
「ん?」
「その…何て言うか…」
頬をぽりぽりと引っかいてどう言えばいい物か考える。
指輪だってもう一度渡さなくてはならないんだけれど…
「…押し倒していいです?」
1番想っている女性にぺったり張りつかれて、変な気を少しでも起こさない男なんていないでしょう?(ぇ
「ストレートだなぁ」
す、すみません…
くすくすと笑うフレイア様を左腕で支え横たわらせて、私はその頬に唇を寄せる。
ふにふにとしたマシュマロのようにふんわりと柔らかい感触。
『…いい根性してるよな』
「うわっ!!!」
唐突に届いたプリブにうろたえる。
周囲を見まわす私の慌てっぷりに一言。
「起きたみたいだね」
「…ですね」
ウィザードアイでも“部屋の中”としか表示されなくなったのに。
ゲート真南にあるこの部屋は扉の両サイドに開放感あふれる窓。ぶっちゃけて言ってしまえば…外から丸見え。
フォルク様自身はご自身の部屋におられるみたいですけれど、気分的にちょっと…
「ダメだ」
そのまま横へと転がり仰向けになった私に向かってフレイア様が笑い声を上げる。
「根性なし〜」
えぇ、根性なしで結構です。
後でファイアーボールをぶち込まれるのは嫌ですからね。
…今度、窓の前に木を植えよう。
長Σ
まぁ…とことん甘いサーラさん。彼女に限らず、敵対する人物以外には厳しく接することが出来ません。
だから、こんな事になったりするんですよね〜…反省(ぇ
内容は比較的べた甘…こんなのアンジェに携わっていた時以来のようなw
最後妨害に走ったのは、向こうが正気に戻ったからでしょうかね(Orphe=Lifer's player)
おかげで、裏にふさわしい物とならずにすんで感謝(もう遅い様な気がしないでも(ぁ
こういう風なキャラモードの時って…大抵プレイヤーズトークが間に挟まってるんですが・・・
今回はいつもより凄かったですw
本当にかっこよくて魅力的ですよね〜実際におられるとすれば…惚れます(*ノノ* (謎)
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