遥か昔、1人の女の子がこの世に生まれた。
赤い髪、緑の瞳。
周囲の大人たちは、申し子が生まれたかと色めき立った。
だが、それは先走った想像に過ぎなかった。
途端に失望する大人たち。
それだけならまだしも、事あるごとに口に出して言うのだ。
「お前は何故力を持たずに生まれたのか…」
心無い人々の言葉にも、彼女は挫けなかった。
前向きに生きて、成長した彼女は恋をしていた。
次代の申し子を守る騎士の1人に…
妹の様に可愛がっている少女を優しく見守る彼を見て、彼女は心を奪われた。
何も言えずに時は過ぎ。
ある時、少女が行方知れずになった。
もちろん彼女は彼に事情を聞きに行った。
どうしても、自分の耳で確かめなければ、信じられなかったからだ。
そうして、彼の口から全てを知った。
“どうして、私は選ばれないの…!”
「どうして…あの子だけが…どうして…!?」
愛すべき少女はその瞬間から憎むべき物となった。
力だけでなく、想い人の心まで手に入れた少女。
少女のせいではないと分かっていても、傷付いた心から溢れる物を押さえることは出来なかった。
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