赤い竜巻が駆け巡る


 今日はエアトル様もビオラちゃんもしばらくは夢見に戻ってこない。
 なぜなら一人と一匹でFortune Landへ向かっているから…
「ふぅ…」
 ため息をついて物思いに耽る。
 今日はフレイア様が夢見に来るはずなんだけどな…
 何度目かのため息の後、フレイア様の使い魔ねこがやってきて、彼女の話によれば、あの方も間もなく…と来た!
 その場の皆さんに去ることを告げながら慌てて、ポポットの方へ走った。
「あ、サーラ」
 赤い髪、赤い瞳の私の最愛の女性。
「よくいらっしゃいましたね」
「うん」
 “兄さんもビオラちゃんもいないのって珍しいもんね”と笑う彼女と、しばらくの間とりとめのないことを話して…
「お腹すいたぁ〜」
 唐突にお腹をぎゅっと押さえてフレイア様が声をあげる。
「ご飯食べたーい」
 幼い頃と変わらぬ様子で、きゃぁきゃぁ騒ぎ立てるのを宥めて“☆海行き”を提案する。
「ね?とりあえず☆海行きましょう」
「うん」
 連れ立って夢見から出ると、フレイア様が“くす…”っと笑う。
「どうなさいました?」
「“デートだ”ってKetroさんが」
 デ…デート…そ、そんなつもりは全く…
「い…いや、でもまぁ…そうなるんでしょうか…」
「そうなるんだね〜。
 ねぇ、私たち、デートなんてまともにしたことないと思わない?」
「え…」
 よくよく考えてみれば…
 この方が幼い頃は論外として、戻ってきてからずっと…
「ない…ないです」
 予想外の事実にがっくりとなる。
「よしっ初デートだ♪色々回ろう」
 更に元気になったフレイア様は腕をぐいぐい引っ張って、駅へ
 鉄道を乗り継ぎ☆海についた私たちはまず、リクエスト通り食事の準備。
「何を食べます?」
 冷蔵庫からざらざらと取り出したものを見た彼女は“そんなに食べたら太っちゃうねぇ…”と一言。
「一口サイズにしますから大丈夫です」
 …すみません、エアトル様。
 残りは全部お気に入りの魚たちにプレゼントしますから許してくださいね。
 心の中で謝りながら、食べ物を取り出す間、魔道研究所で頑張るSchneeさんと話す。
「さーらぁ…何やってるの〜」
 動きが鈍りがちなのに気付いたフレイア様が声をかける。
 理由を話して、とりあえずは納得した様に頷いた彼女の目の前に料理を並べる。
「ミニチュアバイキングみたい」
 確かに、これだけ揃うと量は少なくとも圧巻ですね…
「いただきまぁす♪」
 ぱくつくフレイア様とちまちまと減っていく料理を見ながら私も地鶏串焼きを口にする。
 しばらく経って、ミニチュアバイキングもその姿を消し…
「ん。好物はないみたい」
「ですね…作りに行きますか?」
 うぅん・・・実のところ私はあまり料理が得意じゃないんですけどねぇ…
 今食べたものをメモしていると、Schneeさんからプリブが届く。
 ずいぶん大変な状況らしく、メモを取る手を止めてそちらに聞き入ると…
「さぁらぁ〜」
 理由を察したらしく低い声の呟き。
「ぅ…ちょっと待っててくださいって」
 宥めて、届く声に意識を集中させる私にフレイア様が叫んだ。
「私よりSchneeさんの方がいいんだわぁ」
 思わず、意識を集中させるのをやめて向き直る。
「なんて人聞きの悪いッ…違いますってば」
 なんて事を言い出すんでしょうね、この方は…
「どこが違うの?」
「フレイア様ぁ…」
 思わず泣きたくなるのをこらえて、
「私そんな趣味ないです。きっぱり断言します、絶対にそれはありえないです」
 すぱっと言い放つのに、しぶしぶ頷くフレイア様。
 私って…そんなに信用ないですか…?
 戸締りなど出かける準備をしていると、こちらの事情を知った彼が声をかけたらしく…フレイア様と2人話しているらしい…
 “Schneeさんとお話中”と聞いて仕返しとばかりに
「私よりSchneeさんのほうがいいと!?」
 と叫ぶと“誰もそんな事いってない〜”とあっさり返されてしまう。
 うぐぅ…

 何だかんだあって、食料品店に向かって調理開始。
 ところが…作っても作っても出来あがるのは危険な食べ物と“Anman”。
 “あんまん職人になったら?”との言葉に苦笑しつつ、刃物屋と食料品店を行ったり来たり…
「あんまん職人さん頑張れ♪」
 いくら作っても作っても出来あがるものを見てフレイア様がこんな掛け声を…
「やめてくださいよ〜」
 と情けない気持ちにはなるけれど、出来あがるのはやはりあんまん。
 山のようなあんまんを作りつつ“やはりエアトル様ぐらいじゃないとまともに作れないか”と諦め戻る事に。
「ここまで頑張ってくれたんだから、もういいよぅ」
 がっくりした私を見かねたのか、そう声をかけてくれるその優しさが余計に辛い・・・
 まぁ、あの方が作ってないものが作れたのだけは嬉しかったですけどね。
 これでフレイア様の好物なら最高だったのに…
 最後に私の好物を作るとおっしゃったフレイア様が包丁を握り…
「てへ…失敗しちゃった」
 出来あがったでろんでろんのシチューを目の前に、顔が引きつる。
 まさか…食べろとは言いませんよね?
 そんな内心の恐怖心を知ってか知らずか…
「ポイしちゃわないとね、ポイッ」
 目の前であっさり廃棄されて、食べてみたかった気がするやらほっとするやら。
 “次はどうしましょうか”と話し合ううちにNOIへ行こうということになった。
 NOIならその気になればいろんな世界にも行けるし…
 決まればすぐ行こうということで、安全なゼリアルートでNOIについた私たちは、家のある位置の確認を…
 そこにSyandamさんが“じ〜〜〜”っと視線を送ってくる。
「ん?」
「どこが面白いんだろう…」
 という彼の言葉に私はすぐぴんと来た。
「もしかして…何か言ったとか」
 フレイア様の使い魔ザザは今も夢見にいるはず。
 ならば、そこで何を言ってるのか分かったもんじゃな…
「ザザ猫がNOIに来たら面白いかもって」
 やっぱり!!!
 問い詰めようと口を開きかけたところで、楽しげにフレイア様が言うのは…
「大声に注目♪」
「ちょっと待った。
 私は絶対に叫ばないですよ」
 それが何を意味しているのか気付いた私は、すかさず言った。
 一方のフレイア様はSyandamさんの“何を叫ぶんです?”問いに…
「それはもちろん…“お泊りで(*ノノ*”」
 あぁああ…言った…
「昼間っからお熱い事で…」
 Syandamさんの言葉に真っ赤になりつつ、慌ててその場から離れるのは私。
 いや…だって…ね…

 開拓地の家でフレイア様を待つ間にウィザードアイを唱える。
 見れば夢見勢がP戦をしていて、最悪の状況だという事に気付く。
「今叫ぶと大恥だ…」
 くすくすくすという笑い声に、顔を上げれば小悪魔のようなフレイア様が見える。
「“いいじゃない”とか考えてるでしょう…」
 私の言葉に“うん♪”と答えられ、冷や汗が止まらない。
「夢見で噂が広がったらどうするんですかぁっ」
「いいじゃない♪」
 うぅっ…そりゃ、フレイア様はめったに夢見にこないし良いですよねぇ…
 でも、私は…
 暗く、どんよりと沈む私に、フレイア様はことさら明るい声で“さぁて、叫びにいこ♪”と…
「やめてくださいぃ」
 止めようとする私とそれをかわすフレイア様。
 どちらに運命の女神が微笑んだかというと…
「…行こう」
 呟くやいなやサークルのロックを解除して、家を飛び出すフレイア様。
「フレイア様ぁあっ?」
「先行ってるね♪」
 ちょ、ちょっと待ってくださいよっ!!
 慌てて、家を出るも、もう既にフレイア様の姿は見えず…
「早い…さすが」
 妙な関心をしつつ、問題の部屋の前にいくと、フレイア様が不敵な笑みを浮かべて待っていた。
「さ、帰りましょうか」
 さりげなく、扉から引き離そうとすると“やーだ”と頑なに離れようとしないフレイア様。
 う・・・っ
 別に…別に入るのはいいんですよ、私だって…
 でも、こんなに知り合いがいる時っていうのが嫌なんですよ…
 AquaさんだってHienさんだってKuraさんだってRu-doさんだって…他にもたくさんいらっしゃるんですよぅ?
 “ふふふ…”と笑うのに“ダメですからね”と釘をさす。
「叫びたいな〜ダメ?」
「ダメです」
「どうしても?」
「えぇ」
「どぉおおお〜してもっ??」
 うぅう、フレイア様、今日はやけにしつこいです。
「だって、後でからかわれます…」
 この言葉にフレイア様は頬を膨らませて“面白くない”とつぶやく。
「鍋なら付き合いますから」
 こことは別な意味で危険だけれど、大声はないから…と提案してみても、
「鍋は嫌」
 身もふたもなく却下される。
「私が叫んで入っちゃったらどうする?」
「え…?」
 悪巧みを思いついたような表情に嫌な予感がひしひしと…
「こういう時、女のほうが強いんだよね〜」
 と言うやいなや、すぅっと息を吸いこむ。
「わわわわっ!!フレイア様ストップ!」
 ぴたっと息を止めて“もうダメだぁ”
 …と思えば…
「ふぅ♪
 どうしようかなぁ〜」
 くるっと振り向いてにっこり微笑む姿はまさに小悪魔。
 し…心臓に悪すぎる。
「帰りましょうよ、ね?」
 この言葉に黙り込むフレイア様。
 今のこの方は一体何をしてかすか分からず不安にかられる。
「ねぇ…フレイア様ぁ…
 こんなところじゃなくても家でだっていいじゃないですか」
 ゴホン…こんなのは方便だから、信じない様に…
 とにかく、今叫ぶのだけは避けたい私は、あれやこれやと話し掛ける。
「…叫ぶ事に意義がある」
「うっ…」
 これはダメだ。
 ここまで、頑強に主張する時のこの方は何を言っても聞き入れない。
「…腹をくくりますか…」
「叫んでいい?」
 わくわくしているのが手に取るように分かる。
「どうぞ…」
「きゃ♪」
 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、扉の前に立ったフレイア様はさっきの様に息を吸いこみ…
「ご宿泊で(*ノノ)」
 あぁあ・・・叫んだ…本当に叫んでしまいましたよ、この方は…
 こうなれば、私も本当に覚悟するしかなくて…
 同様の大声で室内へ。
「まったく…あなたという人は」
 苦笑しているのが自分でもよく分かる。
 こうなれば、もう怖いものはなく室内にあった看板もきっちりと…

「ぶっ…」
 思わぬ名前に笑いが止まらない。
「なかなか入りたがらないあなたとは大違いだね〜」
「それを言われますと…」
 私とあなたはこちらの世界ではめったに顔を合わせてませんし…
 そこで、ふとある事に気付く。
「…P戦の騒ぎ…聞こえます?」
 そう、さっきまでNOIに響いていたP戦の大声と激戦の様子が、私たちの大声の直後にぴたっと止まっていた。
「ん〜ん…聞こえない」
「終わったのですかね…?」
 考え込む私にフレイア様がぽそっと。
「聞き耳たててるとか」
 ッ…!
「ちょ、ちょっとそんなの嫌ですよ」
「覗き穴があるとか」
 それも嫌です。
 ウィザードアイで調べれば、まだP戦は続いているらしい。
 それからまたしばらく経って…Exceedさんの大声が響いた。
 ただの小休止だったらしい。
「ふぅ…」
 一息付いて、胸をなでおろす。
「出ましょうか」
「ん」
 中を見て満足したのか、あっさりと承諾する。
 けれど、外に出た後“どうしましょうか?”尋ねた私に“もう1つ極めつけがあるじゃない”とフレイア様。
 そう、このNOIにはもう一箇所…
「…ここまで来たら怖いものはない…か。行きましょう」
 私たちが向かったのは、チャット部屋の更に奥。
 ぽふんぽふんとそれに飛び乗って跳ね回る。
「さ、これでいいですか?」
「うん。気が済んだ。☆海に戻ろ♪」
 ☆海に戻って…今日のデート…(?)は終わり。
「兄さんに見つかるとまずいから」
 と真っ赤な髪を翻して、家から遠ざかるフレイア様の姿がいつもより子供っぽく見えるのは気のせいでしょうか…
 楽しいと言えば、楽しい一日でしたが、今度はもう少しおとなしいルートにしましょうね…
 こんなに気を使うルートだと私持ちません…




6月11日のデートの模様(笑)
キャラクターとしてはともかく、プレイヤーとしてはひたすら叫ぶのを避けようとした一日でした。
でも、一度入ればもう怖くないですね、次からは躊躇いなく叫ぶと思います(*ノノ*
思うんですが…この部屋って女性キャラよりも男性キャラの方が辛いと思いません?(笑)
表には書いてませんが…
サーラもフォルク同様、彼女の味方についてます。
そういった訳で、たとえ彼女と会っていようとも、エアトルやビオラちゃんには知らせないのです(酷

ご指摘通り、男性キャラがどうにも弱い…というか女性キャラが強いのが特徴ですね…w

おまけ

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