□ 異世界移動論 □
■世界移動に関する魔力考察■
全く理の違う2世界のゲートを開く際、ゲートを開いた本人はともかく、他者を転移させるのは容易で無い。
以前、3人で移動した時には、全員が全く違う場所に飛ばされた事があった。
PHI世界からエルディアへと戻ろうとしても同じ事が起こると予想される。
単純に考えれば、術者と転移者を分ければ良いわけだが、
この場合は術者の魔力に耐えうるだけの器、もしくは対抗するだけの魔力を有する者だけが転移者としかなり得ない。
例の転移陣によって作られたゲートは、元々遠く離れた世界を近づけた上で空間を捻じ曲げて作っている物。
同じ理で働いている、PHI世界同士に置いてもごくまれにゲート事故が起こるのだから、
全く違う我々の世界とのゲートなどと言えば、安定性の乏しさもさる事ながら、不確定要素の塊のような物だろう。
無理やり開いている間にしか通りぬけ出来ない上に、維持する魔力も並大抵の物ではない。
更には力の源が全く違う魔力同士がぶつかって、ゲートの中はまさしく嵐の真っ只中であることが予測できる。
(予測できるというのは、今現在行き来している4人では、ほとんど感じ取れないからなのだが)
シェアラのように、対抗魔力は無くとも器の容量がある者なら通りすぎる事は可能だ。
特にシェアラは地の力が大きく働いている。
私の持つ風とは反する力で、少々の力で嵐を弱める事は可能。
ただ、魔力制御の効かない彼女では少々の精神的疲労は考えられるが…命に関わる事は起こり得ない。
逆に対抗魔力を持つ者としては…ビオラ。
魔力耐性は十分とは言えないだろうが、制御と対抗魔力に関しては文句なしだろう。
問題は供給魔力のバランスが保てないゲートの半分過ぎ。
多少慣れているとはいえ、新しく加わる力に耐え切れるかどうかが疑問だ。
ビオラを連れて行こうとするならば、私が同時に通る方法を考えなくてはならない。
もしくは、向こうの出口で魔力を中和する…例えばサーラがゲート内を安定させることで問題は無いはず。
サーラでなくとも、対抗魔力・制御力のある者が、ビオラの周囲に防御壁を作れば大丈夫だろう。
対抗魔力・耐性もない者にゲートを通ってもらうとすれば、時間にすれば一瞬とはいえ、辿り着くまで身が持たない。
仮に…フェリアで考えてみるとすれば。
耐性・制御・対抗…全てに置いてゲート移動は難しい。
同一世界の移動なら魔力もさほど必要もないために可能だが、異世界への移動は一部の例外を除き無理だろう。
「…自分でトドメをさしてどうするんだ」
ペンを放り出して、天井を見上げる。
フェリアをどうやって移動させるかを考えていたのにも関わらず、方法を考えれば考えるほど出て来るのは無理という証明。
ねこは種族として魔術的干渉力も高いとは聞いていたが、今なら異世界の移動でも耐えられるほどの能力を身につけた。
一番の気がかりと言える供給魔力の違いも、私の使い魔となったために慣れて、ほぼ問題ない。
前に、ついうっかりねこの目の前でゲートを開いてしまった事でそれは確信している。
もっとも…かなり後になってから“とんでもない事をやった”と青くなった物だが…
あの時に流れ込んだ魔力に耐えられたならば“不測の事態”が起こらぬ限りは無事に移動できる。
シェアラはもちろん問題ない。
申し子同士の魔力はその気になれば吸収することが出来るぐらいに近しい物だ。
容量はもちろん、器自体が頑丈に出来ている上に、私の風とは相反する地の属性。
弱めて吸収してしまえば、身体への影響はない。
ただし、魔力制御に慣れてないあの子では、移動を終える頃には眠くなる程度に疲れている事は間違いなしだな。
…問題はフェリアだ。
元々の魔力もない。容量はもちろん、器…身体自体が私たちに比べると(魔力干渉には)脆い。
ついでに、制御はまるでダメ。
Flyで目標がきちんと定まらずに桜を全滅させかけた事が一番最近の事件だが、
小火を消そうとして、火に油とばかりに一気に燃え広がらせたとか、怪我を癒そうとして傷口を広げたとか…
どれもこれも思い出しただけでも血の気が失せる。
ここまで壊滅的だと“コントロール出来るようになれ”とは怖くて言えん。
PHI世界になまじ魔力があるから手に負えない。
いっそ成長世界みたいに魔力と呼べる物がほとんど無ければ…ここまで複雑化する事もないんだろうが。
まぁ、元々あそこは空間の壁を隔てて裏表と言えるほどに、近い世界だから移動も楽なのか…
それにしても、全く方法が思いつかないとは。
“星送りの願い事”というのも叶えられる事と叶えられない事があるいう訳だな。
以前の文章の答えの一部です(w
今の彼があるのは申し子の力があってこそで、それが無ければ全く違う人になっていたでしょうね。
力を捨てたとしたら、さすがにPHI世界に行く事は出来ないだろうなぁ…(汗)
さて、彼の願い事が叶うのはいつでしょう?
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