「地の申し子は闇に連れ去られ、この世界から消えたと言う。
生死は不明…けれども、残された彼の片割れたちさえも同時に行方をくらませたという事は…」
隣の机で音読しているのは、この国の女王。
過去の申し子の足跡を調べると宣言した彼女は、赤の神殿に集められた書籍を読む作業に専念している。
一番の目的は、自分が生まれ変わりとされる、過去の地の申し子の資料。
闇の王を追いかける一連の出来事で過去に触れてしまった私たちは、その存在を知ってしまった。
『いつかきっともう一度出会う』
誓った2人の記憶が甦ってしまった以上、無視することも出来ずにこうして書物を当たっている。
それを見ている私も一冊の本を手にしていた。
昔語りでもよく知られた、風の申し子とそれを導いた精霊の物語。
「申し子の恋愛話って…どうしてこう悲恋続きなんでしょうね」
ぽいっと放り投げてつぶやいても答えはなし。
…目的の本を読むことで頭がいっぱい…ですか。
水の申し子の目の前で連れ去られてしまった地の申し子。
「連れて行かないで…!」
自分たちが仕える神に祈ってもそれは聞き入れられることはなく。
時が巡り…
水の申し子として生まれ変わった地の申し子ナシェイルと、地の申し子として生まれ変わった水の申し子クラウシィア。
器を変え、名を変え、2人は出会い結ばれた。
“恋人同士だった存在の感情で惹き合っているだけに過ぎないのでは”
余計なことを知ってしまったために、そうやって悩み苦しむ姿が見ていられない。
結婚式の日に私があいつに言った言葉を思い浮かべる。
『あの方を悩ませたら…泣かせたら、ただじゃ済まさないからな』
今回のことはあいつのせいじゃない。
十分分かっているから“別れてしまえ”とは口にはしない、出来ない。
けれど、ふと考える…
“もし、もしも選んだ相手が最初から私だったら、もっと違った結果があったのかもしれない”などと。
考えると同時に、こんな運命を押し付ける相手に怒りすら覚える。
“尋常ならざる力を持って幸せだ”と人は思うのかも知れないが、生まれたくて申し子に生まれたわけではない。
力を持って生まれたがゆえに、見たくも無い物から目を逸らす事が出来ない。
かといって、放棄しようと決め、遠い未来へと飛べば…
“元の時代へと帰らなくてはならない”と全員が思わざるを得ない程に、そこで見た物は残酷で。
例え、何億もの時が過ぎ、直接知る者が誰一人としていなくなったとしても、その足跡は残される。
やり残した事があった結果、こうなるのだと滅びの未来を突きつけ…挙句の果てに“これ”だ。
高く積み上げられた本の山…半ば埋もれる様にして読書に没頭している彼女の背はあまりにも小さい。
そこに広がるはずの翼が強く見えて触れれば消えそうに脆く、
皆に見せている気丈さすらも弱さを覆い隠すための物だという事を、何人が知っているのだろう。
そんな…儚い存在にどれだけの重荷を抱えさせれば気が済む。
『もういいだろう。自由にしてやってくれ…!』
叫ぶ私の声を無視して、二つの月は沈黙を続ける。
PHI世界に行くかな〜り前のお話に当たります(笑)
グラン塔の記憶石を見ていて、ポポロ2のピエトロとナルシアの事を思い出して、
更にはそれで話し合ったことを思い出して(…覚えてるのかなぁ(苦笑)
延々続いてきている物語の中で、フォルクの位置が微妙なので、
それを再確認する意味でちょっと書いてしまったもの。
彼自身、自分が本来の時間から消えることによってどうなったかを未来で知ってしまって、
戻った時にリーナとの婚約を決心したんですけどね…
運命に流されたくないと思いながら、従っていく彼らは幸せとは言えないのでは…と最近ちょこちょこっと。
PHI上の彼らを見ていると、こんな面があるというのを一切合財無視したような明るさがあるなと思いますが…
日記にも書いた“力を持たずに生まれてきていたらこうなんだろうな”というのがあれだと思います。
Dエリアのお話でも、設定をかなりはしょった所もある事ですし…(
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