□ 家を建てよう □
平安京の家の中にはいくつかの部屋の仕切りをリゾで壊している家もあって、
ふと気になって、看板を見てみると“重複使用は構いません”
つい先日、Stepの部屋が金属壁になっていた話をした瞬間、
「嘘つき〜っ!!!」
左耳から右耳へと突き抜ける声で、叫ばれました。
今考えてみれば、何もStepでなくてもいいわけで…それにここなら本当に2人だけの家も建てられる訳で。
ここ最近、怖くて近づかないようにしていましたけれど…今はいるかな…?
「おはようございます」
「おはよ〜…どしたの?やけににこやか」
挨拶からしていつもと違うのが分かったのか、何となく怪訝な表情を浮かべた。
「実は…平安京の部屋を一緒に改造しません?」
「ほ?」
確保したスペースを伝えて、簡単に説明をすると目を丸くする。
「いや、でもあれ…」
「重複使用OKだそうですから」
「うわぁ、本当に!?」
驚き半分喜び半分の表情に、この間からどうなることか冷や冷やしていたけれど、
どうやら運に見放されきったというわけではないようで。
私が力仕事(リソース)彼女がデザインと役割を決めてから、それぞれの仕事に取りかかって…
とりあえず、リソースを運び終えた所で、フレイア様からプリブ。
「デザイン決まらないよぅ」
中の壁だけでも先に取り壊しておこうかと思っているんですけどね。
「えっと、中は一応全部壊してておっけ〜」
ふむ…そうですか…とリゾを取り上げようした私の頭の中に「今からそっち行く!」と大声。
まもなくやってきたフレイア様が扉を“こんこんこん”
「入ってます〜」
「変な冗談言ってないで開けてよw」
はいはい。
まずは全部の内壁を取っ払って、ぐるりと見まわしてみますと…広いものですね。
「南側はたぶん全部壁」…たぶん?
指示にしたがって作りかえる前に、外から壊せないかをチェック。
壊されるようであれば、シークレットにしないといけませんからね。
「あ〜う〜…さぁらぁ〜難しいよぅ」
頭を抱えて、デザインに苦しんでいる様ですね。
「ふむ…まずどんな家にしたいと思ってますか?」
私の問いかけにフレイア様は首をちょっと横に傾げる。
「木とか水とか…」
ふむふむ
「つまり…自然な感じの家にしたいわけですね」
うんうんと頷くフレイア様は更に続ける。
「後ね、寝室も欲しいし、お風呂場も欲しい〜」
結構欲張りですね。
「浴室を作るとなれば、やっぱり室内で壁を作らないといけませんね」
私の言葉にふむふむと頷く。
「真中ではちょっと手狭になりますよね?」
「うん…そだね」
「入り口付近も嫌ですよね?」
力強く頷くフレイア様…まぁ、当然でしょうけど。
「なら、おのずと隅っこになる訳で…それも南側」
言いきった私に「ん〜…」と悩むフレイア様。
「それが決まれば東か西か」
「西側かなぁ…」
「後はスペースですね。大きく取るか小さく取るか…」
「そんなに大きくなくていいなぁ…寝室と同じエリアにして…」
…ゆ、湯気が入る…
思った直後、考え込むようにあらぬ方を向いていた顔がこっちへと向く。
「何か言った?」
「いいえ、何も」
まだ何か言いたそうにしていた彼女は、1つ頷いて、
「ありがと、何だかちょっと方針見えてきたw」
ぎゅぅっとしがみついた直後には、ペンを手に再びデザインを考え始めた。
「出来たぁっ♪」
大体の形は出来たというそのデザインを見て、
「やっぱりリゾが足りないな…」
小さく呟いたその言葉を聞きとがめた彼女。
「買ってこようか?」
事もなげに言ったセリフに慌てて首を振る。
「ライズのないあなたをうろうろさせたくないですから」
これで何かあったら、悔やんでも悔やみきれない。
「あなたは出来あがる様子を見て、途中で変えたくなったら指示を」
少し声色が厳しくなっていたのか、真剣な表情で頷きかえす彼女。
しまったなぁ…楽しく作ろうと思っていたのに…
「じゃぁ、始めますか」
そういって微笑みかけると、フレイア様の表情が緩んだ。
…とはいうものの、リゾがあっという間に足りなくなって、急遽7塔から運びこむ羽目に…
「おかえり〜」
「ただいま」
さて壊すかとリゾを構え、使おうとする私にフレイア様が声をかける。
「ねねね、ふと思ったんだけど、サークルもう1つあったほうがいいかな?」
“2つじゃ足りないかなぁって…”と新しく示したデザイン。
「それだと手狭に感じませんか?」
「そうかな…」
「この方が広く感じるかと」
デザインにちょっと書き加えてみる。
「ん〜…確かに」
「後、気になってるのが…」
何だろうという感じで、きょとんと私を見上げる。
「南側がたぶん寝室だと思ってるんですけれど…」
うんうんと頷くフレイア様にますます疑問が膨れ上がる。
寝室と思われる南側4スペース。その北側に位置する壁と扉…は理解出来ます。
「あのガラスは一体」
西壁から壁2扉1…その隣にあるガラス。
「あの方が綺麗かなぁって」
確かに綺麗には綺麗ですけれどね。
「寝室丸見えじゃないですか」
そりゃ、奥にいたら見えませんけど。
「だぁって、いる時どうせ玄関閉めるでしょ?」
あっさり返答。
「ま、まぁそうですけど…」
「それなら綺麗な方がいいじゃない」
すりガラスとでも…思えばいいんでしょうか。
「でも、サーラの提案の方が広く見えそうだからそうする」
ガラスはそのままなんですけどね。
「では、あのように…」
うぅん…やっぱり釈然としない物が…
図面は出来あがっているのだから、後は建てるだけ。
内装を手早く片付けて“お任せ”された外壁に目をやった。
「…浴室に…窓?」
水を張った所でその存在に気付いた。
「壊しちゃえ」
それはもちろん。
浴室の窓は壊したものの、リビングにはもう少し窓が欲しいと調達に。
帰りがけに着替えをおいておく部屋を窓から覗き込んで、どこまで見えるかを確認。
まぁ、これなら窓を置いても大した事は無いですね。
後は声がどこまで届くかなんですけれども。
「フレイア様、ちょっと窓の側まで」
窓を建て付けて、どこまで声が聞こえるかを確認…
すぐ側に立たなければ外へはあまり聞こえない様ですね。
「よし、向こう側にも建て付けますか」
外壁も出来あがって、後は細かい所の調整なんでしょうけれど…
「草〜」
そことそこと指定されたのは窓の前。
どうせなら、と水をくんできた私に彼女が“何だろう”という感じの表情。
「アクセントが欲しくありません?」
「うーん。確かに…」
リビングの真中に張られた水でパシャパシャ遊ぶフレイア様はさておいて、荷物の整理を始める。
3つのサークルにきちんと分けなくてはならないので…
遊ぶのをやめて、最後に残ったリビングと寝室とを分ける扉の看板デザインを考え始めた彼女。
どうやら色が決まらないようで「色をつけて」と泣きつかれた。
いや…私もそんなに得意というわけではないんですけれども…
考えた末に、いくつか書き出した中から選んでもらって、最後は玄関…寝室の鍵はフレイア様が握るので、中央玄関は私の担当。
色は寝室と同じにするとしてもと考えて、ある事を思い出した。
一瞬笑みを浮かべて、書いたのは…
「ねこ屋敷」
笑うフレイア様に頷く私。
だって、これしかないでしょう?
部屋の奥から顔を出して手招きする私に首を傾げて付いて来た彼女。
少し相談したい事があるのですけれど、どう切り出していい物やら…
「…私に懐いていた女の子がいたでしょう?」
「あぁ、いたねぇ」
眉間にぐっとしわ。
ま、まだ怒ってますか!?
「別にぃいい」
心の声を読まないで下さいと泣きたくなる。
「ま、まぁ、私の事はさておき…最近はエアトル様に懐いているようなのですが」
目を丸く見開いたフレイア様。
「フェリアといい…あの仏頂面のどこがいいのかしら…」
色々な趣味の方がいるでしょうに。
「フェリア様が知ってしまうと…そのエアトル様はあの通り…抜けているというか…鈍いというか…ねぇ?」
うんうんと頷くフレイア様。
「ともかく、フェリア様はこちらの世界に関しては、全く手出しが出来ないのですから、
なるべく黙っておいて差し上げて欲しいのですけれど」
「うーん…そうだね。フェリアが知ったらどうなるか…」
フレイア様とフェリア様…2人は義理の姉妹以前に幼馴染ですからね。
放っておいたら素通りになるし、口止めが必要ですよね。
「怒るならまだしも、こううちに篭って憂鬱になられると…」
「うん」
私の言葉に頷いてくれるフレイア様…ただ、何かおかしい。
「ど、どうなさいました?」
「何にも…」
…い、いや、眉間のしわがまた酷くなってます。
「何か不機嫌になられてないです?」
「別にぃい」
うわぁあんっ、私何かまずい事しましたか!?
「ほぉんんと…サーラって…優しいよね〜」
低くて、やたら刺々しい声…
「ほんとほんと…こんな人が旦那様で、私ってほぉおんんとに幸せよねぇええ」
怖い…
“ふふふふ…“と地の底から響いて来るような笑い声に嫌な予感。
何を考えたのやら、くるっと身を翻したかと思うと、新しいクローゼットの中をがさがさと…
かろうじて見えるのはそれが…
「ふぅ…」
「ちょ、ちょっとフレイア様…?」
「なぁに?」
見るからに凶悪そうなその物体。
「その手に持ってる物って…」
「鞭だけど、何か?」
やっぱりぃいい!!!
更には、びゅんっと一振りをして一言。
「うん。攻撃可能範囲」
「ちょ、ちょっと…私何か悪い事しましたかっ?」
「別に…」
にっこり微笑…それだけなら天使の笑顔と言っても過言ではないはずなのに、手に持っている物が…
「じゃぁ、何でっ」
「何でって言われても…」
にこにこにこ…綺麗に張りついた笑みが怖い。
「す、すみませんちょっと…」
慌てて部屋のサークルから余ったリソースを取りだした私に、毒気を抜かれたようにきょとんとする。
「グランで屋根が足りないようなので…」
私の説明に、一瞬考え込んだ彼女は、構えていた物をすっと下ろした。
「それがサーラの優しさだもんね…」
ん…?何か納得されている様ですけれど…
「あ、そうだ。1つ謝らなきゃならない事が…」
「え?」
何だか神妙な面持ちに、いつになく緊張する。
「実はね…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
ここ数日の行動を見た限り、下手をしたらとどめをさされるかもしれない。
深呼吸をして次の言葉に対する心の準備を。
「続きをどうぞ」
もう、これで何が来ても、絶対にうろたえたりしない。
「えっと…」
いいごもったフレイア様が、一息置いて言ったのは…
「ふりふり鞭が壊れたの〜っ」
予想外の言葉に一瞬唖然。
「そ、そんな事だったんですか?」
あまりにも深刻そうだったのでてっきり…
「そんな事って…せっかく貰った物だからすごぉく気にしてたのにぃ」
“ひっどい”とむくれるのに、まずいと感じる。
「あ、いえ…私はもっと最悪の状況を…」
「最悪の状況?何それ…」
聞かれて、言い詰まる。
例えば、別れてくれとか…この間から言われそうで言われそうで…
でも、それを素直に言ったら、それこそ危ないので、
「た、例えば…結婚指輪をなくしたとか」
「それよりはマシだよね」
そう言って“疲れたなぁ”とごろごろし始める。
…とりあえず危機は去りましたかね?
同じくごろごろしていると…エアトル様が平安京を猛スピードで駆け抜けて☆海へ。
私の方が近いのに、ご自分で行きましたね。
「…何かあったの?」
「ちょっと変質者が出た様で、ビオラちゃんが…」
「えぇっ!?大丈夫なの!?」
“大丈夫”と答えると「…今度連れてきたら?」とポツリ。
「この世界に連れてくる事自体が別の意味で危ないかと」
1割デスペナ、ついでに野良雀卓など…。
家の中にいる分には向こうの方が絶対に安全です。
「あ…ドレス破れてる」
再びクローゼットをがさがさと漁り始めて一言。
「それなら…ちょっと待ってて下さい」
ついでにあれも持ってこようと、☆海に行って取ってきたのは…アルコール。
まぁ、完成を祝う物が何もなかったので、ワインと色々と、ついでにウィスキー…最後のは私のですけどね。
青ねこが大暴れしている中で、乾杯。
アルコールに弱いフレイア様はワイン1つでフラフラなようで…
「おっと…」
へたりこむのを支え、ベッドにちゃんと寝かせたのをぽんぽんと叩くと
「子供扱いはやだ…やだよぅ〜」
泣いて駄々をこねて、挙句に丸くなる。
やっぱり、中身と外見が不一致ですね…
「そんなわがまま言う所がまだ子供なんですよ」
…と言った瞬間、目に入るのはさっき振り回していた鞭。
まだ持ってる!
酔って振りまわされてはたまりませんので、慌ててそれを取り上げて、クローゼットに放りこむ。
でも、どうしたものかと考えていると…
「のどかわいたぁ…」
にょきっと出てきた手が、その辺りをがさがさと漁り始め、
「あ」
止める間もなく、飲み干されたのは件のウィスキー。
“とどめだな”と妙に冷静な判断。
案の定、ぽてっと手が落ちて、次の瞬間には寝息が…
「これだもんな…」
“でも、まぁいいか”と苦笑い。
「おやすみなさい」
あ〜…家作り面白いですw
またどこかで機会があればとか考えてます(^^*
実際には他にも色々ありましたけれど…削除(ぇ
一部に期待されている“4人目”はいつになるでしょうねぇ…(遠い目
ちなみに、彼女が振りまわすのは、例のプレゼントした鞭で、えぇ、今思い返しても大墓穴です。
軽い気持ちで渡した物がここまで…(。。
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