□ ライバルとして… □
「なぁ、エアトル。お前、どうして女に生まれなかったわけ?」
「…どういう意味だ」
久々にエルディアへ戻ってきた私を待ち構えていたのは、自称“ライバル”のルフィウ・J・ディルア。
「いや…だってさ、お前、妹と似てるだろ。
それって、つまり…お前が女ならモテたって事だよな?」
何だそれは。
「…別にモテたくなんぞない」
その言葉を無視してルフィウは続ける。
人の話ぐらいまともに聞け。
「オレさァ、国の連中がうるさいのよ…“早く王位について王妃を”ってさ」
「…それで?」
向こうへ出かけている間にたまった書類に目を通しながら受け答えする。
…全く、仕事もせずにふらふらとしているからそう言われるんだ。
それにも気付かず、何がうるさい、だ。
「んで、オレ思ったんだけど…」
そう言って、私の持っていた書類を取り上げる。
「お前〜、人が話してるのにちゃんと聞けよなぁ」
「…だらだらと冗長に話しているからだ。
そもそも私はお前の話を聞きに戻ってきたのではなく、仕事を片付けるために戻ってきたんだ、邪魔するな」
その手から書類を取り返し、再び目を通し始める。
「うへぇ…怖えぇ…」
「怒らせたくなければ、作業がすむまでぐらいは黙ってそこにでも座っていろ」
顔を書類から上げずに指だけはソファのある辺りを指す。
「…へ〜ぃ…」
ほんっとーに怒るとおっかねぇ…
そうぼやきながら、ルフィウはソファへと向かう。
誰が怒らせてるんだ、誰がっ!
その上“黙って座れ”と言ったはずなのに…
「あ、そうそう、さっきの続きだけど…」
などとまた話始めた。
…本当に…話を聞かない男だな。
「お前がな、女なら国に連れてって“こいつが王妃になる”って言ってもいいなぁ〜、なぁんて」
一瞬ペンを折らんばかりの力が手にかかる。
ミシッ…
いや、折れはしないがひびは入った。
「…ふざけるな」
怒りを押し殺してそれだけを言うと、ルフィウはあの気に障る大声で笑った。
「あ。怒った?あっははは♪」
こ…こいつ…
殺気だっているのが分かっているのか分かってないのか、なおも大声で続ける。
「いやぁ〜お前の妹が結婚してなきゃ、さらってってもいいんだけどさ。
オレ、一応そこらの分別ついてるつもりだし」
「どこが分別付いてるって!?」
思わず、立ち上がり睨み付ける。
「ぉっやるか!?」
と嬉しそうに構えるルフィウ。
…はぁ。
「いや…」
やっぱり、こいつは勝負をさせるために私を怒らせようとしてるんだろうか…
「…ベルフィールからも言われたのだがな…」
とりあえず、こいつをどうにかしないと気が散って仕事どころではない。
仕方なしに書類の束を脇に寄せ、座りなおす。
「お前、いい加減国に戻れ」
「何で?」
にま〜っとだらしのない笑みを浮かべた顔を私に向け、ソファに寝転がる。
「…お前の父親もサタナキアも今は居ない。
次の国王はお前だろう」
「そんなの関係ないね。
大体、お前だって妹に王位を押しつけたくせに」
…それは…
「それなら、オレだってベルに王位を譲ったっていい訳だ」
体勢を変え、ソファに座ったルフィウは私に指を付きつける。
「根無し草みたいにふらふらしているオレより、あいつの方が国王に向いてる。お前だってそれは分かってるだろ?
それに…兄貴が国王になったあと、ベルは知の面で、オレは武の面でサポートするつもりだったんだ」
オレが王位についてもただのお飾りにしかならないさ…
そう呟くルフィウは珍しく真面目だ。
「…そうか。それならばもはや何もいうまい」
全く考え無しに行動しているわけではない以上、私が口出しする事ではない。
後は…こいつとベルフィールとの問題だ。
「な、それよりも、お前さ」
「ん…?何だ」
更にしまりのない顔でにやにやと笑う。
「今度、女装してジェラルシードに来ない?
とりあえず“王妃候補はいるから”とでも言えば、あいつらきっと黙るからさ」
〜〜〜〜〜っ!!!!
「出て行けッ!!!
金輪際、私にその面、絶対見せるなっ!!!」
バシン!!!
手にした本を投げつける。
「うへっ…ホントに妹似だな」
受けとめた本をぽいっと放り投げ、ルフィウは身を翻し、部屋を出て行く。
「…っく〜っっ」
怒りで頭が焼き切れそうに熱くなる。
「あ、そうだ」
閉まった扉が再び開いて、ルフィウが顔を出す。
「言い忘れてたけど、また来るかんな♪」
「もう来るなと言ってるんだ!」
再び投げつけた本の音が即座に閉められた扉の音と重なると共に、例の大きな笑い声が外で響き離れていく。
…あいつ…いつか絶対に物言えんようにしてやる。
前回、サーラが口にした出来事w
エアトルからしてみれば、妹だけでも手を焼くのに、さらに強烈な弟が出てきた様な感じでしょうか。
ルフィウは彼を怒らせて勝負してくれればもうけものとでも思ってるのでしょう…
この2人の掛け合いは書いていて面白いですね♪
考えなくてもすらすら進む(ぉ
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